包茎手術でHIV感染は予防できるか?

アフリカでの調査結果は必ずしも眉唾とは言えません。

包茎とHIV感染リスクの議論は1994年の国際会議の時にカナダのグループが
アフリカのデータを発表していました。当時、私がフロアから質問したのですが、
議論がかみ合いませんでした。

jaidsというMLでの議論では「包皮部分にHIV-1が感染する標的の細胞、
つまり樹状細胞が多い」とか、「感染受容細胞の数」が多いことではHIV感染
のリスクが高まるとの考えを語る医師もいました。

包茎と病気の関連性は古い事実
むいて洗えない「真性包茎」はHPVが原因とされる陰茎がんが多いことは
泌尿器科医の常識ですが、逆にいわゆる仮性包茎(むける包茎)が半数
以上を占める日本人に陰茎がんが多いという事実はありません。

Circumcisionの習慣がないアフリカの医師たちとディスカッションしたのです
が、当面の考え方(証明する術がないので)としては以下のように整理して
います。

1.清潔が大切
日本人男性の半数以上がいわゆる仮性包茎(非Circumcision群)だがそれが
HIVの感染率を高めたり、陰茎がんのリスクとならないのはむいて清潔にする
入浴環境があるため。入浴環境が整備されず、包皮内に感染受容細胞が多
いだけではなく、包皮内が不潔な状態になっていれば、炎症が感染率を高め
ることにつながることは明白です。

2.真性包茎(むけない包茎)はHigh Risk
むけない包皮と亀頭部の間にHIVが侵入した場合、排尿だけでは包皮内板に
付着したHIVを取り除けないためHIVは感染受容細胞との接触時間が長くなり、
感染リスクが飛躍的に高まる可能性があります。

3.むけてもむかない包茎もHigh Risk
アフリカでは入浴を含め、体を洗う習慣がどの程度確立されているのか、また、
その際にいわゆる仮性包茎の人たちが「むいて洗う」習慣があるかが重要な
ポイントです。「むけてもむかない包茎」は結果的には真性包茎と同じHigh Risk
群となります。

4.コントロールスタディをするとしたら
「むいて洗っている包茎」、「むいて洗っていない包茎」、「むけない包茎(真
性包茎)」、「亀頭部常時露出陰茎」の群で比較する必要があります。しかし、
ここまでの検証をした研究はありません。

5.Circumcisionに対するこだわりの排除
そもそも宗教観や慣習からCircumcisionをしている人は「しない」状態に対する
科学的な理解と議論ができません。そのためCircumcision群が非Circumcision
群と比べて優位なデータがあればそれを強く主張したがっていると思えてなりま
せん。。

実は包茎を手術すべきか否かは日本の泌尿器科医の中でも議論に決着がついて
いません。一番「科学」が入りにくいのはこの「性器」の分野かもしれませんね。


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